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急激な吐き気と冷や汗は危険なサイン?

健診結果に関するお悩み
急激な吐き気と冷や汗は危険なサイン?
友利 賢太

院長 友利 賢太

資格

  • 医学博士(東京慈恵会医科大学)
  • 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
  • 日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
  • 日本消化器内視鏡学会
    上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本消化器内視鏡学会
    大腸内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本外科学会 日本外科学会専門医
  • 日本消化管学会 消化管学会専門医
  • 日本ヘリコバクター学会 H. pylori 感染症認定医
  • 4段階注射療法受講医
  • 東京都難

急激な吐き気と冷や汗は危険なサイン?

吐き気は危険なサイン

突然、胃の奥からこみ上げるような吐き気に襲われ、額や背中にじわっと冷や汗が滲む――このような症状は、一時的な体調不良で済む場合もありますが、内臓の異常を知らせる身体からの重要なSOSサインであることも少なくありません。特に、症状が急激で、かつ強烈な場合には、単なる胃腸炎ではなく、胆のう疾患の可能性を強く疑うべきです。吐き気や冷や汗は、体が強い痛みやストレスにさらされた際に自律神経が反応して起こる「バイタルサインの乱れ」です。胆のうに異常がある場合、その周囲の神経や血管が刺激され、脳が「異常あり」と判断して、交感神経を優位にします。これにより、皮膚は汗ばみ、胃腸は急速に動きが鈍り、吐き気を感じるようになります。

冷や汗も危険なサイン

また、冷や汗は内臓に重大な疾患があるときに特有のサインでもあります。特に、胆石が胆管に詰まり、胆汁の流れが遮断された状態では、体は緊急事態として反応し、痛みや発汗、吐き気を一気に引き起こすのです。痛みのピークが30分〜数時間で繰り返すような場合、胆石による「胆石発作」であることが多いです。

こうした症状が繰り返される、または発熱、黄疸、右肩や背中への放散痛を伴うような場合は、胆のう炎や胆管炎へと進行している可能性があるため、即座の受診が必要です。


胆のうとはどんな臓器?どんな働きをしているの?

胆のうの働き

胆のう(たんのう)は、肝臓の裏側にひそかに存在する、小さな洋梨型の袋状の臓器です。一見目立たない存在ですが、実は脂肪の消化に欠かせない胆汁をコントロールする重要な役割を担っています。胆汁は肝臓で作られ、胆のうに一時的に蓄えられます。食事、特に脂肪分を含むものを摂取すると、胆のうは収縮し、胆管を通じて胆汁を十二指腸へ送り出します。胆汁は脂肪を乳化し、消化酵素(リパーゼなど)が働きやすい状態にすることで、脂肪の分解と吸収を助けます。

このプロセスがスムーズに行われている間は、胆のうの存在を意識することはほとんどありません。しかし、胆汁の成分(コレステロール、ビリルビンなど)のバランスが崩れたり、流れが滞ったりすると、胆のう内で結晶が形成され、やがて胆石が発生します。これが胆のうの中や胆管に詰まることで、強い痛みや消化不良、吐き気などの症状が出現します。


胆のうに起こりやすいトラブルとは

胆のうは一見地味な存在に見えるかもしれませんが、その働きが阻害されると、私たちの体に多大な影響を及ぼします。特に注目すべき胆のうのトラブルとしては、「胆石症」「急性胆のう炎」「胆のうポリープ・胆管炎」があります。これらの疾患はしばしば激しい腹痛、吐き気、冷や汗といった症状を引き起こし、場合によっては命に関わることもあるため、早期の理解と対処が必要です。

胆石症
脂っこい食事の後に起こる腹痛の正体とは

胆石症(たんのうしょう)は、胆のうや胆管内に石(胆石)が形成される疾患で、現代では成人の10〜20%が罹患しているとされる比較的身近な病気です。胆石は、胆汁中のコレステロールやカルシウム、ビリルビンが結晶化してできたもので、大きさや数はさまざまです。多くの場合、胆石は無症状で見つかることが多いですが、胆のうや胆管を塞いだ場合に急激な症状(胆石発作)を引き起こします。発作は食後30分〜1時間後に起こりやすく、右上腹部からみぞおちにかけての痛み、吐き気、冷や汗、背中や右肩への放散痛などが特徴です。
この痛みは波のように繰り返されることがあり、脂肪分の多い食事が誘因になることが多いです。胆石は1個だけでなく、複数存在することもあり、大きさによっては胆管に完全に詰まり、緊急手術が必要になることもあります。治療は、無症状であれば経過観察となることもありますが、発作が繰り返される場合や合併症が懸念される場合は、腹腔鏡による胆のう摘出術(胆のう全摘)が標準的な治療となります。

急性胆のう炎

急性胆のう炎は、胆石が胆のうの出口(胆嚢頸部や胆嚢管)に詰まり、胆汁の流れが遮断されて胆のう内に炎症が起きる病気です。これは胆石症の合併症の中で最も危険度が高いもののひとつで、放置すると胆のうの壊死、穿孔(穴が空く)、さらには腹膜炎や敗血症といった命に関わる病態へと進行する恐れがあります。典型的な症状は、右上腹部の強い痛み、発熱、悪寒、吐き気、冷や汗、黄疸(まれ)などで、特に発熱と痛みが同時に現れる場合は急性胆のう炎を強く疑う必要があります。痛みは右肩や背中に放散することもあり、体を動かすと悪化する傾向があります。
診断は、腹部超音波(エコー)や血液検査で行われ、白血球数やCRPの上昇、胆のう壁の肥厚などが見られると確定的です。治療には抗菌薬が使用され、重症例では緊急の外科的処置が必要になります。特に高齢者や糖尿病の患者は、短時間で重症化するリスクが高いため注意が必要です。

胆のうポリープ・胆管炎

胆のうポリープは、胆のうの内側にできる小さな隆起で、多くは良性です。しかし、大きさが1cmを超えるものや急速に大きくなるタイプ、血流が豊富なものなどは悪性化の可能性(胆のうがん)もあるため、定期的な超音波検査による経過観察が必要です。一方、胆管炎は、胆汁の通り道(胆管)に感染が起こる病気で、重症化すると敗血症を引き起こす非常に危険な疾患です。胆石が胆管に詰まり、胆汁がうっ滞することで細菌感染が起こり、強い発熱や寒気、黄疸、意識障害などが生じます。これは「シャルコーの3徴候」と呼ばれ、緊急処置が求められる状態です。
治療としては、抗菌薬とともに、胆管に詰まった胆石や胆汁を内視鏡(ERCP)で排出する処置が行われます。いずれにしても、胆のう・胆管の異常がある場合、早期発見と迅速な対処が命を守る鍵になります。


こんな症状が出たら胆のうを疑おう

胆のうにトラブルがある場合、症状は突然始まることが多く、その強さと特徴的な部位に注目することが早期発見のポイントです。ここでは、胆石や胆のう炎、胆管炎などの胆のう疾患で特に現れやすい症状を詳しく解説します。

右上腹部の強い痛み

胆のうに問題がある場合、最も典型的な症状が右上腹部の鋭い痛みです。これはみぞおちよりやや右寄り、肋骨の下あたりに出現することが多く、「差し込むような」「えぐられるような」痛みと表現されることがあります。この痛みは突然始まり、数分から数時間続くことがあります。中には、背中や右肩、肩甲骨の間まで痛みが放散する「放散痛」を伴うケースもあります。

食後の吐き気・嘔吐

胆汁は脂肪の消化に関わるため、脂っこい食事のあとに症状が出やすくなります。食後30分〜1時間以内に急な吐き気や嘔吐を伴う場合は、胆汁の流れに障害が起きている可能性があります。特に吐き気に加えて腹部の圧迫感や張りを感じるようであれば、胆のう由来の問題を強く疑うべきです。

発熱・冷や汗・悪寒

胆のう炎や胆管炎のような感染性の疾患では、高熱・悪寒・冷や汗が症状として現れることがあります。特に38℃以上の発熱が急に出て、全身の倦怠感が強くなる場合には、細菌感染が胆汁のうっ滞部に起きている可能性があり、放置すると敗血症やショック状態に陥る危険性もあります。

黄疸(肌や白目の黄ばみ)

胆管が完全に閉塞された場合、胆汁中のビリルビンが血液中に逆流し、皮膚や目の白い部分が黄色くなる「黄疸」が出ることもあります。これは胆汁が適切に排出されていない明確な証拠であり、肝機能や胆道系の精密検査が必要です。

便の色や尿の色の変化

胆汁の流れが滞ると、便が白っぽくなり、尿が濃い褐色になることがあります。これはビリルビンの代謝が妨げられているためで、肝臓・胆のう系のトラブルで最も注意すべきサインのひとつです。

これらの症状が一つでも当てはまる場合は、市販薬での対処では不十分であり、すみやかに医療機関を受診することが必要です。特に「急な右上腹部の痛み+吐き気+冷や汗」は胆のうトラブルの代表的な三徴候として覚えておくと良いでしょう。


胆のうトラブルの原因と誘因

胆石症や胆のう炎

胆のうに関連する病気が起こる背景には、私たちの生活習慣や体質、年齢、性別、さらにはホルモンバランスや内臓の構造といったさまざまな要因が複雑に絡み合っています。これらの原因や誘因は、一つ一つは目立たなくても、時間の経過とともに胆のうへ確実に影響を与えていきます。とくに胆石症や胆のう炎などは、日々の食事内容が大きな要素となっており、高脂肪・高コレステロールの食事が長期間続くと、胆汁の成分バランスが崩れ、コレステロールが過剰に分泌されます。胆汁内のコレステロールやカルシウム、ビリルビンといった成分が結晶化し、胆のう内に沈着しやすくなり、やがて胆石が形成されるのです。

肥満や女性ホルモン

さらに、肥満は胆石リスクを高める代表的な因子です。肥満の人は一般的に肝臓でのコレステロール合成が増加し、結果として胆汁の中のコレステロール濃度が上昇します。これが胆石形成の土台となるのです。また、体重の急激な増減も胆汁の流れに変調をきたし、胆のうの収縮を妨げることがあるため、注意が必要です。一方で、女性特有のホルモンも胆のうトラブルに深く関わっています。女性ホルモンであるエストロゲンは、肝臓でのコレステロール分泌を促進する作用があるため、妊娠中、経口避妊薬の使用、更年期のホルモン補充療法など、ホルモンバランスが変化する時期には胆石ができやすくなる傾向があります。

生活習慣病や生活習慣の乱れ

また、糖尿病や高脂血症といった生活習慣病も、胆のう疾患のリスクを高める要因とされています。これらの疾患は胆汁の代謝に影響を及ぼし、胆のうの機能が低下することによって、胆汁が滞りやすくなります。その結果、胆のうの中に胆汁が長くとどまり、胆石や感染症のリスクが高まるのです。加えて、現代人が抱えやすい精神的ストレスや、食事時間の乱れ、不規則な生活習慣なども見逃せない誘因です。自律神経の働きが不安定になることで、胆のうの収縮機能に影響が及び、必要なときに胆汁がうまく排出されなくなることがあります。この状態が慢性化すると、胆汁の停滞が慢性的に起こりやすくなり、炎症や石の形成につながるのです。

このように、胆のうのトラブルは単なる食べ過ぎや脂質過多だけではなく、ホルモン、病気、ストレス、生活の不規則さといった多角的な要因によって発生しやすい臓器的な弱点だということがわかります。だからこそ、予防や早期対応のためには、日常の生活習慣を総合的に見直すことが重要なのです。


胆石が原因で起こる症状とその仕組み

胆石症とは、胆のうや胆管の中に石ができる病気であり、その胆石が引き起こす症状は突然でありながら、非常に激烈です。日常生活の中で何気ない食事をきっかけに症状が出現し、「何か変だな」と感じた数分後には身動きができないほどの痛みに襲われることも少なくありません。

胆石

胆石は、胆汁中に含まれるコレステロール、カルシウム、ビリルビンなどの成分が結晶化して形成されます。正常な胆汁の状態ではこれらの成分が適切にバランスを取り合って液体として存在していますが、濃度の変化や胆のうの機能低下が起こると、結晶が成長して石になります。この石が胆のう内にとどまっているだけなら、ほとんどの人が無症状のまま経過します。しかし、石が動いて胆のうの出口や胆管に詰まることで、体は急激な異変として症状を訴え始めるのです。胆石が胆のうの出口、すなわち胆のう頸部や胆管に嵌頓すると、胆汁が正常に流れなくなります。この胆汁のうっ滞が胆のうの内圧を高め、胆のう壁が引き伸ばされることで、痛みを感じる神経が強く刺激されます。その結果として現れるのが「胆石発作」と呼ばれる現象で、右上腹部に鋭い痛みを覚えるのが特徴です。痛みはみぞおちから右脇腹、背中や右肩へと放散することもあり、多くの患者が「脂っこいものを食べたあとに急にお腹が締め付けられるように痛くなった」と語ります。

胆石の痛み

この痛みは、数分から数時間続くことがあり、発作の最中には吐き気や嘔吐、さらには冷や汗をかくこともあります。体は胆のうの異常を生命の危機と判断し、自律神経を総動員して反応するため、全身に緊張が走り、胃腸の動きも止まり、まるで風邪やインフルエンザのような倦怠感や体調不良を伴うこともあります。
胆石が胆管に移動し、完全に詰まってしまった場合、胆汁のうっ滞が続くだけでなく、胆汁の成分が逆流し、肝臓や血液中に異常をきたすこともあります。これにより、黄疸が出現することがあり、肌や白目が黄色く変色し、尿の色が濃くなったり、便が白っぽくなるといった症状が見られるようになります。こうした状態は単なる消化不良ではなく、明らかに胆管や肝臓が危機に陥っているサインであり、迅速な対応が求められます。
また、胆石によって胆のうの内圧が高まり続けると、血流が悪化し、炎症が発生します。この状態が進行すると「急性胆のう炎」となり、炎症が激化して細菌感染が加わると「化膿性胆のう炎」「壊疽性胆のう炎」など、非常に重篤な病態に発展することもあるのです。こうなると、抗生剤や点滴だけでは対応が困難になり、外科的に胆のうを摘出しなければ命を守れないケースもあります。

つまり、胆石がもたらす症状というのは、単なる「お腹が痛い」という一過性の不調ではなく、体の中で胆汁という重要な消化液が正常に機能しなくなったことで発生する、複雑かつ急激な消化器系のトラブルなのです。早期に気づき、適切な検査と診断を受けることが、胆石による重篤な合併症を防ぐ鍵となります。


胆のうトラブルが悪化するとどうなる?

胆のうの異常は、初期の段階では軽度の痛みや不快感として現れることが多いため、つい見過ごしてしまいがちです。しかし、胆石の移動や胆のう内部での胆汁の滞留が続くと、症状は一気に深刻化します。特に胆石症や急性胆のう炎が放置された場合、重篤な合併症を引き起こすことも珍しくありません。

胆のう炎の進行

胆のう炎が進行すると、まず「壊疽(えそ)」と呼ばれる状態になることがあります。これは胆のうの壁にある血管が詰まり、組織に血流が届かなくなることで、胆のうの一部が腐り始める現象です。このような壊死状態では、炎症が胆のう全体に及ぶ前に手術で胆のうを摘出しなければ、命の危険に直結します。さらに重症化すると、「穿孔(せんこう)」という胆のうに穴があいてしまう状態が発生します。胆のうにたまった膿や胆汁が腹腔内に漏れ出すと、激しい腹膜炎を引き起こします。腹膜炎は全身に細菌や毒素が回り、放置すればショック状態や多臓器不全、敗血症といった極めて危険な状態に陥る可能性があります。

慢性的な胆のう炎

また、慢性的な胆のうの炎症が長年続くと、胆のうの壁が硬く厚くなり「ポーセリン胆のう」と呼ばれる状態になることがあります。このような状態は、胆のうがんのリスクが高まることでも知られており、予防的に胆のうを摘出する判断がされるケースもあります。胆のうがんは初期症状が非常に乏しく、気づいたときにはすでに周囲の臓器に転移していることもあるため、リスクがある場合には早期の予防と処置が求められます。

このように、胆のうの異常は軽度の痛みに始まり、気づかず放置すると極めて深刻な事態へと進行します。特に「右上腹部の繰り返す痛み」や「吐き気と冷や汗」が数回でも見られた場合は、自己判断で済ませず、医療機関を受診することが命を守る第一歩となります。


医療機関での検査と診断の流れ

胆のうに何らかのトラブルが疑われる場合、医療機関では問診から始まり、各種検査を組み合わせて正確な診断が行われます。診察の流れは非常に体系化されており、症状が出現してからの時間経過、痛みの部位、食事との関連、過去の病歴などを医師が詳細に確認した後、物理的な検査と画像診断、血液検査へと進んでいきます。

視診と触診

まず最初に行われるのは「腹部の視診と触診」です。胆のうが炎症を起こしている場合には、右上腹部を押すと強く痛みが出る「マーフィー徴候」という反応が見られることがあります。これにより、胆のうが関与している可能性が高いと判断されるのです。

腹部超音波検査(エコー)

次に非常に重要な役割を果たすのが「腹部超音波検査(エコー)」です。この検査では、胆のう内にある胆石や胆泥、胆のうの壁の厚み、胆管の拡張などをリアルタイムで観察することができます。胆石が存在する場合は、石のサイズや数、位置によって治療方針が大きく左右されるため、ここでの情報は非常に貴重です。特にエコーで胆のうの壁が分厚くなっていたり、周囲に液体が溜まっている像が見られると、急性胆のう炎が進行している可能性があると判断されます。

血液検査

また、血液検査も欠かせません。炎症の指標であるCRPや白血球数、肝機能を示すAST・ALT、胆道系酵素であるALPやγ-GTP、そしてビリルビン値などを確認することで、胆道の閉塞や肝臓への影響の程度を把握します。これらの数値が高い場合は、胆のうだけでなく、胆管や肝臓にも炎症や障害が及んでいる可能性があります。

CT・MRI検査

さらなる詳細な評価が必要な場合には、「CT検査」や「MRI(MRCP)」が行われることもあります。これらの画像検査では、エコーでは確認しづらい深部の胆管や胆石、腫瘍の有無、胆のう壁の壊死状態などを把握することができます。

ERCP

胆管に石が詰まっている可能性がある場合や、黄疸が強く出ているときには、「ERCP(内視鏡的逆行性胆管造影)」という検査が行われることもあります。これは内視鏡を使って十二指腸から胆管へアプローチし、造影剤を注入して胆汁の流れを画像化する方法で、必要に応じて石を取り除く処置も同時に行えるという特徴があります。

このように、胆のうに関する診断は複数の検査を組み合わせて行われるため、専門的な医療機関では体系的なアプローチが必要不可欠です。軽度な症状でも、これらの精密検査により重篤な病変が見つかることもあるため、異変を感じたら早めの受診が極めて重要だと言えるでしょう。


治療方法と手術の選択肢

胆のうの治療

胆のうトラブルに対する治療方法は、症状の程度や胆石の状態、患者の年齢や持病の有無によって大きく異なります。治療は大きく分けて、内科的な保存療法と外科的な胆のう摘出手術の2つに分類されます。まず、胆石が見つかっても症状がまったくない場合や、非常に軽度の違和感だけで済んでいる場合には、経過観察という選択肢もあります。特に高齢者や手術リスクの高い患者には、無理に外科的治療を行わず、生活習慣の見直しや薬物治療で胆汁の流れを整える方針が取られることもあります。

腹腔鏡下胆のう摘出術

一方で、痛みや吐き気、冷や汗といった発作症状が明確に現れている場合には、胆石による胆のうへの圧迫や炎症が進行している可能性が高く、外科的治療の対象になります。最も一般的なのが、「腹腔鏡下胆のう摘出術」です。これは、お腹に数カ所の小さな穴を開け、カメラと器具を挿入して胆のうを切除する手術で、体への負担が少なく、術後の回復も早いという利点があります。この手術は通常、1〜2時間程度で終わり、術後の入院期間も3〜5日程度と短めです。また、傷跡も目立ちにくく、日常生活への復帰も比較的スムーズに行えます。胆のうを摘出しても、肝臓からの胆汁はそのまま小腸へ流れるため、体に大きな支障は生じません。ただし、炎症がひどい場合や癒着が強い場合には、開腹手術に切り替えることもあります。また、胆管に胆石が詰まっているようなケースでは、ERCPを用いた内視鏡手術で石を取り除いた後に胆のう摘出を行う段階的な治療が選ばれることもあります。

薬物療法

薬物療法については、胆のう炎が進行している際に使用される抗菌薬や、発作時の鎮痛剤などがあり、症状を一時的に和らげるために処方されます。しかし、胆石そのものを完全に取り除くことは難しく、結局は再発の可能性を残すため、根本治療としては手術が最も確実な選択肢です。

胆のうトラブルの治療において重要なのは、「発作を繰り返す前に適切な処置を行うこと」です。症状が悪化してからの手術は合併症のリスクが高まり、体への負担も増えるため、医師とよく相談しながら早期の対応を心がけることが望ましいといえるでしょう。


胆のうを守るための生活習慣

生活習慣を整える

胆のうを健康に保つためには、日常の食生活や運動、睡眠といった生活全体の質を見直すことが最も重要です。胆のうは体の奥にある目立たない臓器ではありますが、その働きは食事に大きく影響されるため、ライフスタイルと直結しているといっても過言ではありません。

食生活

最初に意識すべきは、食事の「質」と「リズム」です。高脂肪・高カロリーな食事を長期間続けていると、胆汁中のコレステロール濃度が上がり、胆石形成のリスクが格段に高まります。ファストフードや加工食品、揚げ物などを日常的に摂っている人は、知らぬ間に胆のうへ大きな負担をかけているのです。野菜や果物、魚、豆類、海藻などを中心としたバランスのよい食事に切り替えることは、胆汁の分泌バランスを整える上で非常に有効です。また、食事の「時間帯」にも注意が必要です。朝食を抜いたり、夕食を深夜に取るような習慣は、胆のうの収縮リズムを狂わせ、胆汁の滞留を招く要因となります。特に朝食をしっかり摂ることで、夜間に胆のうにたまった胆汁が自然に排出され、胆石予防に直結します。

運動習慣やストレス緩和

運動習慣も胆のうの健康に大きく関わります。長時間の座りっぱなしや運動不足は、内臓の血流や胆汁の流れを悪化させ、胆石のリスクを高めます。毎日30分程度のウォーキングやストレッチを取り入れることで、腸や胆のうの働きを活性化させることができます。さらに、ストレス管理も欠かせない要素です。慢性的なストレスは自律神経を乱し、胆のうの収縮が不安定になります。深呼吸、瞑想、入浴、十分な睡眠などを通じて心身をリラックスさせることで、胆のうの機能も自然と整っていきます。

禁煙とアルコール制限

最後に、禁煙と適度なアルコール摂取も胆のうを守る上で重要です。喫煙は消化器全体の血流を悪化させるだけでなく、炎症を引き起こしやすくするため、できる限り早めの禁煙が望まれます。アルコールに関しても、大量摂取は肝臓・胆のうの負担になるため、飲酒は適量を守ることが胆のう保護につながります。