

院長 友利 賢太
資格
- 医学博士(東京慈恵会医科大学)
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
- 日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器外科学会 消化器外科専門医・指導医
- 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
- 日本消化器内視鏡学会
上部消化管内視鏡スクリーニング認定医 - 日本消化器内視鏡学会
大腸内視鏡スクリーニング認定医 - 日本外科学会 日本外科学会専門医
- 日本消化管学会 消化管学会専門医
- 日本ヘリコバクター学会 H. pylori 感染症認定医
- 4段階注射療法受講医
- 東京都難
目次
下腹部がチクチク痛むとはどういう症状か
「下腹部がチクチク痛む」と一口に言っても、その感じ方は人それぞれです。痛みの程度も、ズキズキとした鋭い痛みから、チクチク・ピリピリとした軽い刺すような感覚までさまざまです。この“チクチク感”は、短時間で収まることもあれば、長時間続くこともあり、繰り返す頻度や時間帯によって、原因が異なることがあります。
女性の腹痛
特に女性の場合は、月経周期との関係で痛みが出やすい時期があったり、便秘や腸のけいれんによっても同様の痛みを感じることがあります。痛みがある位置や、そのときの体調、ストレスの有無などを組み合わせて考えることで、どの臓器が関与しているのかを予測することができます。
このようなチクチクした痛みは、腸そのものの動きが過敏になっていたり、腸内にガスが溜まることによっても引き起こされることが多く、痛みの原因を突き止めるには、消化器・婦人科の両面から考える視点が必要です。とくに持続的な痛みがある、便通と関係している、または月経以外のタイミングでも生じる場合には、病院での精密検査を受けることをおすすめします。
女性に多い下腹部痛の特徴
女性が経験する下腹部痛には、男性と比べて特有の要因がいくつか存在します。生理周期、ホルモンバランスの変動、子宮や卵巣などの構造的特徴が、腸や消化器官に影響を及ぼすことが多く、それが下腹部の痛みとして現れることがあります。特に排卵日や月経前後に感じる下腹部のチクチクした痛みは、腸の動きやガスの溜まり、骨盤内の血流変化などと関連して起きている場合があります。
女性ホルモン
また、女性ホルモンの一種であるエストロゲンとプロゲステロンは、腸の運動に影響を与えることが知られています。排卵後や月経前にはプロゲステロンが増えることで腸の動きが鈍くなり、便秘になりやすく、結果としてガスが溜まったり腸が膨張したりして、チクチクとした痛みを誘発します。逆に月経中には腸が刺激に過敏になりやすく、けいれん性の痛みが出ることもあります。
生活習慣
さらに、ストレスや冷え、睡眠不足といった日常の要因も女性の体には影響を与えやすく、腸の機能に直接的な影響を及ぼします。便秘や下痢を繰り返す人は、腸内環境の変化によっても痛みを感じやすく、特に下腹部に限定した痛みが現れることが多いのです。これらの症状は一時的であることもありますが、数日以上続く場合や日常生活に支障があるようであれば、軽視せず医療機関での診断を受けることが勧められます。
腸が原因の下腹部のチクチク痛
腸が原因となって起こる下腹部の痛みは、女性に非常に多く見られるものの一つです。とくにチクチクと刺すような軽い痛みは、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が活発になったり、ガスや便が溜まって腸が張っているときに現れやすい症状です。このような痛みは、いわゆる「腸のけいれん」が原因であることが多く、胃腸が敏感になっている状態といえます。
腸の機能が乱れる原因
腸の機能が乱れる主な原因は、ストレスや食生活の偏り、睡眠不足、運動不足などの生活習慣です。特に女性はホルモンバランスの変化により腸が過敏になりやすいため、環境の変化や緊張する場面で症状が悪化する傾向があります。実際、日常的な便秘や、緊張時に下痢を伴うといった腸の不調が、チクチクした腹痛として表れることも珍しくありません。また、腸の内側に小さな袋ができて炎症を起こす「憩室炎」や、便が長期間腸内に滞留して腸が膨張する「便秘性腸症候群」なども、同様のチクチク痛の原因になります。いずれも早期に対応すれば症状は改善しやすいため、「ただの腹痛」と軽く考えずに、症状が繰り返す場合は消化器内科を受診するのが安心です。
婦人科系の臓器との関連性は?
女性における下腹部の痛みの原因は、腸だけでなく婦人科系の臓器とも深く関係しています。とくに卵巣や子宮周辺の異常がある場合、腸の痛みと区別がつきにくく、腹部のチクチクとした痛みとして現れることがあります。たとえば、子宮内膜症や卵巣嚢腫(のうしゅ)は、軽度でも腹膜を刺激することで、局所的な違和感や刺すような痛みを引き起こすことがあります。
また、排卵時に卵巣から排出された卵子が腹腔内に刺激を与えることで一時的な痛みを感じる「排卵痛」も、腸の痛みと勘違いされやすい代表的な症状です。排卵痛は左右どちらかの下腹部に限定され、短時間で治まることが多いですが、個人差が大きく、1〜2日間痛みが続く人もいます。
子宮筋腫なども、大きさや位置によっては腸を圧迫し、間接的に下腹部痛を引き起こす要因になります。このような婦人科疾患は月経異常や出血、排尿障害などの他の症状も伴うことが多いため、痛みだけでなく月経周期や体調全体を見て判断することが大切です。
婦人科系の病気は早期には自覚症状が乏しいことも多いため、腹痛が定期的に起きる、もしくは月経以外の時期にも違和感が続くようであれば、一度婦人科での検査を受けることをおすすめします。
痛みの部位と性質で分かる病気のサイン
下腹部の痛み
下腹部に痛みを感じたとき、その痛みの位置と感じ方によって、ある程度病因を推測することができます。たとえば、右下腹部にチクチクとした痛みが集中している場合、盲腸(虫垂炎)の初期症状である可能性があります。特に徐々に痛みが増し、押すと強く痛むような場合は早急な受診が必要です。
左下腹部の痛み
左下腹部の痛みは、腸のS状結腸や直腸が関係することが多く、便秘や憩室炎、過敏性腸症候群の可能性が考えられます。特にガスが溜まって腸が張っているときは、圧迫感やチクチクとした持続的な痛みが出やすくなります。
下腹部中央の痛み
下腹部中央の痛みで、排尿時に違和感がある、頻尿、残尿感がある場合は、膀胱炎などの泌尿器系の問題も視野に入れるべきです。また、生理前後のタイミングで中央部の痛みがある場合は、子宮由来の痛みの可能性もあります。
痛みの性質も重要なヒントです。刺すような痛みや瞬間的な鋭い痛みは、筋肉のけいれんや腸の動きに起因することが多く、鈍い痛みや重だるさが続く場合は内臓系の慢性的な不調を示唆します。このように、場所と性質をしっかり観察することで、痛みの正体に近づくことができるのです。
危険な痛みとすぐに病院へ行くべきケース
下腹部の痛みが一時的なものであれば、様子を見て自然に治まることもありますが、中には早急に医療機関を受診しなければならない「危険な痛み」もあります。特に、激しいチクチクした痛みが突然起こり、時間の経過とともに強くなる場合には注意が必要です。虫垂炎(盲腸)のように、初期は軽い痛みでも、放置することで腹膜炎など重篤な合併症に発展する可能性があるからです。
腹痛に伴う症状
また、痛みに加えて発熱、吐き気、嘔吐、出血などの症状を伴っている場合も、すぐに病院へ行くべきサインです。特に、便や尿に血が混じる、あるいは月経以外の時期に不正出血があるといった症状は、婦人科疾患や腸の炎症性疾患、腫瘍などが原因である可能性があります。
さらに、今までに感じたことのない種類の痛みを感じたり、数日経っても改善しない場合には、原因不明の内臓トラブルが隠れていることも考えられます。例えば、卵巣の茎捻転や卵巣嚢腫破裂などは急激な腹痛を引き起こし、放置すれば不妊や命に関わる事態になることもあります。
このように、「いつもと違う」「治らない」「悪化している」と感じたら、それは体が発している警告信号です。迷ったら早めに医療機関を受診し、原因を明らかにすることが健康を守る第一歩となります。
便通やガスと一緒に現れる場合
下腹部のチクチクした痛みが、便通の変化やガスの排出とセットで現れる場合、それは腸に何らかの機能的な異常が起きているサインかもしれません。特に便秘やガス溜まりが続くと、腸の内圧が上がり、腸壁を刺激して刺すような痛みが起こることがあります。こうした痛みは、排便やおならをした後にスッと軽減することが多いのが特徴です。
女性に多く見られる過敏性腸症候群(IBS)もこのような症状と関係があります。IBSでは腸がストレスや食事の影響で過敏に反応し、便通異常とともにチクチク、キリキリとした痛みを伴うことが多く、特に朝の通勤前や緊張する場面で症状が現れやすくなります。
ガスの溜まりやすさには、腸内環境や食べ物の種類も深く関係しています。食物繊維の多い野菜や豆類、炭酸飲料、乳製品などを摂取した後にガスがたまりやすくなる人もいれば、食事の仕方—早食いや空気を飲み込みながら食べる癖—が原因でガス過多になることもあります。
こうした症状は生活習慣の見直しによって改善することが可能です。腸内環境を整える食事や発酵食品の摂取、リラックスできる時間を持つことなど、腸に優しいライフスタイルを意識することが、チクチクした痛みを根本から減らす一助となります。
腸の不調を引き起こす生活習慣
現代人のライフスタイルには、腸にとって負担となる習慣が数多く潜んでいます。特に女性は、便秘になりやすい体質やホルモンバランスの変化に加え、ダイエット志向やストレスフルな生活習慣が重なることで、腸内環境が乱れやすくなっています。これが原因で、腸の蠕動運動が低下し、ガスや便が溜まり、結果として下腹部のチクチク痛が現れるのです。
不規則な食生活
まず大きな要因となるのが、不規則な食生活です。朝食を抜いたり、夜遅くに食事をしたり、偏った栄養バランスの食事が続くと、腸のリズムが崩れ、便通が乱れる原因になります。特に食物繊維や水分の不足は便秘を招き、腸の内容物が長く留まることで腸内にガスが発生しやすくなります。
運動不足
また、運動不足も腸に悪影響を与える要因の一つです。腸の動きは筋肉によって支えられているため、適度な運動が不足すると腸の動きが鈍くなり、排便がスムーズにいかなくなります。
ストレスや睡眠不足
さらに、ストレスや睡眠不足も見逃せません。自律神経が乱れると腸の働きも不安定になり、過敏になった腸がちょっとした刺激でも痛みを引き起こすようになります。忙しさや不安から食事が適当になったり、夜更かしが続いたりすると、腸はますます不調に陥ります。
このような生活習慣を見直し、規則正しい生活、バランスのとれた食事、ストレスケアを意識することで、腸の健康は少しずつ回復し、チクチクした下腹部痛も改善されていくはずです。
医師に相談するタイミング
下腹部のチクチクした痛みが続く場合、医師に相談するタイミングを見極めることが非常に重要です。「このくらいの痛みなら大丈夫だろう」と自己判断してしまうと、隠れた病気を見逃すことにもつながりかねません。とくに、痛みが1週間以上続く、頻繁に繰り返す、月経周期と関係なく起こる、または生活に支障が出るほどの不快感がある場合は、早めに受診するべきサインです。
また、痛みに加えて下痢や便秘、吐き気、食欲不振、不正出血、発熱、尿の異常など、複数の症状が同時に現れる場合には、消化器・婦人科・泌尿器科など、原因に応じた専門診療科の受診が望まれます。とくに女性の場合は、腸と婦人科系のトラブルが併発していることもあるため、「どこに行けばいいのかわからない」と迷ったときには、まずはかかりつけの内科や婦人科に相談するとよいでしょう。
受診時には、症状を正確に伝えることがスムーズな診断につながります。医師に伝えるべきポイントとしては、以下のような項目をしっかりと伝えらえれるようにしておきましょう。
・痛みが始まった時期と頻度
・痛む位置(右・左・中央など)
・痛みの性質(チクチク、ズキズキ、圧迫感など)
・便通や月経との関係
・食事やストレスとの関連性
・併発する症状(吐き気、発熱、血便など)
こうした情報をあらかじめメモにしておくことで、診察時にスムーズに伝えることができ、医師もより的確に診断を進めることができます。緊張して言いたいことを忘れてしまうこともあるので、簡単に箇条書きにしておくのがおすすめです。
また、健康診断の結果や過去の診療記録、服用している薬なども持参すると、医師が全体の健康状態を把握しやすくなります。「まだ病院へ行くほどではないかな?」と悩んでいる間にも、体は何かを訴えているのかもしれません。小さな違和感を見逃さず、早めの相談が安心につながります。