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腹痛が夜だけ起こるときに考えられる病気

大腸に関するお悩み
腹痛が夜だけ起こるときに考えられる病気
友利 賢太

院長 友利 賢太

資格

  • 医学博士(東京慈恵会医科大学)
  • 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
  • 日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
  • 日本消化器内視鏡学会
    上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本消化器内視鏡学会
    大腸内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本外科学会 日本外科学会専門医
  • 日本消化管学会 消化管学会専門医
  • 日本ヘリコバクター学会 H. pylori 感染症認定医
  • 4段階注射療法受講医
  • 東京都難

夜間に起こる腹痛の特徴とは?

夜になると決まって腹痛に悩まされるという方は少なくありません。日中は何ともないのに、就寝前や深夜に腹痛が出現するという場合、それはただの「一時的な不調」ではなく、体の内部で何らかの異常が起きているサインかもしれません。
夜間の腹痛の特徴としては、胃の奥がジリジリと痛む、腸がキリキリと収縮するような痛み、または鈍くて重たい痛みが続くといった種類に分かれます。痛みが規則的に現れるケースもあれば、不定期に強くなることもあります。また、痛みのせいで夜中に目が覚める、寝付けないといった睡眠の質への影響も見逃せません。


夜の腹痛がもたらす生活への影響

夜間に繰り返される腹痛

夜間に繰り返される腹痛は、ただの一時的な苦痛にとどまらず、睡眠の質を著しく低下させ、翌日の体調や気分にまで影響を及ぼします。夜中に腹痛で目が覚めてしまうと、深い睡眠が得られず、脳も体も十分に休まらない状態になります。このような「浅い眠り」や「睡眠中断」が続くと、翌朝に頭が重く感じたり、集中力が低下したり、常に疲れているような感覚が続いてしまいます。さらに、睡眠不足は自律神経のバランスを崩すため、腸の動きをさらに悪化させ、腹痛の悪循環に陥る恐れもあります。
夜の腹痛は、症状自体がつらいだけでなく、日常生活全体の質を下げる非常に厄介な問題なのです。


夜に多い腹痛の主な原因

消化器系の病気や異常

夜にだけ腹痛が起こる背景には、日中とは異なる体の状態や生活習慣の影響が大きく関わっています。まず第一に考えられるのが、消化器系の病気や異常です。夜になると副交感神経が優位になり、消化管の働きが活発になるため、胃や腸に異常があるとその動きによって痛みが現れやすくなります。

自律神経の乱れ

また、自律神経の乱れも重要な要因です。ストレスや過労、不規則な生活により交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、腸の運動や胃酸の分泌に異常が生じ、夜間の腹痛につながることがあります。

食生活の乱れ

さらに、夜遅い食事や暴飲暴食、高脂肪な食べ物、冷たい飲み物なども、胃腸に負担をかけてしまいます。特に寝る直前の食事は、消化が不完全なまま横になることになり、胃酸の逆流や胃腸の圧迫感によって痛みを引き起こすことが多くなります。


寝ている時の腸の動きは?腹痛との関係

私たちの身体は眠っている間も活動を止めるわけではなく、内臓もそれぞれのリズムに従って働いています。とくに腸の働きは、日中と夜間で大きく変化することが知られています。こうした夜間の腸の動きの特徴が、「夜にだけ腹痛が起こる」原因と密接に関わっているのです。

自律神経によるコントロール

まず、腸の働きは自律神経によってコントロールされています。日中は活動モードである交感神経が優位になり、腸の動きは比較的抑えられます。ところが、夜になるとリラックスモードの副交感神経が優位になり、腸のぜん動運動(腸が内容物を移動させる動き)が活発化します。このタイミングで、腸にガスや便、未消化物がたまっていたり、腸内環境が乱れていたりすると、腸が動き始めたときに痛みを感じやすくなるのです。特に、過敏性腸症候群(IBS)や腸の炎症がある人、腸内フローラが悪化している人は、この夜間のぜん動運動が痛みを誘発することがあります。

食事の時間や量の改善

また、寝ている間は体の姿勢が横になるため、腹部にガスがたまりやすくなるという物理的な変化もあります。ガスは腸内を移動しながら腸壁を刺激し、痛みや張りの原因になることがあります。特に、仰向けよりも横向きで寝ることでガスの移動が活発になり、腹痛が生じるケースもあるのです。もうひとつ注目すべき点は、深夜に体温が下がることによって腸の血流が減り、冷えが腹部に影響を与えるという点です。腸は冷えに敏感で、血行が悪くなるとぜん動運動のバランスが崩れ、過剰になったり逆に停滞したりすることで、腹痛や不快感につながります。特に女性や高齢者、冷え性体質の方は、寝ている間に腸の機能が過敏になりやすく、夜間の腹痛のリスクが高まる傾向にあります。このため、腹巻きや湯たんぽを使ってお腹を温める、寝室の温度を調整するなどの工夫が効果的です。

寝る前にスマートフォン

加えて、寝る前にスマートフォンやテレビなどの強い光を浴びると、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が抑制され、自律神経の切り替えがスムーズに行われなくなります。その結果、腸がリラックスして働くべき時間に、交感神経の影響で混乱し、腹痛や張りが出ることもあるのです。

結論として、寝ている間の腸の動きは「活発化する」のが基本ですが、腸の健康状態や生活習慣によってその影響は良くも悪くもなり得ます。夜間に腹痛を感じる方は、この腸の夜間リズムを理解した上で、生活習慣や食事、睡眠環境を見直すことが、根本的な改善への第一歩となるでしょう。


夜の腹痛で疑われる消化器疾患

夜間にだけ腹痛が現れる場合、まず疑うべきは消化器系の疾患です。特に、胃や腸の粘膜に傷がついている病気や、腸の運動が異常に活発になっている病気などが関係していることが多くあります。以下に、夜間腹痛の原因として代表的な消化器疾患を解説します。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

これらは胃酸によって胃や十二指腸の粘膜がただれて穴が空いてしまう病気です。とくに十二指腸潰瘍は「空腹時や夜間に痛みが強くなる」という特徴があります。これは、夜間は胃の中が空になり、胃酸の影響が粘膜に直接及ぶためです。痛みはみぞおちのあたりに感じることが多く、鈍く締め付けるような痛みが続くこともあります。また、潰瘍が進行すると出血や穿孔(穴が空く)を起こす危険性もあり、放置すると命にかかわることもあります。夜だけ腹痛がある人は、検査で潰瘍の有無を調べることが非常に重要です。

過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群は、腸に明らかな異常が見られないにも関わらず、腹痛や下痢、便秘が慢性的に繰り返される病気です。特に夜間や朝方に腹痛が強くなったり、トイレに何度も行きたくなるケースが多く、ストレスとの関連も深いとされています。症状は波があり、旅行や試験前、仕事のプレッシャーが強い時など、精神的な要因が加わることで悪化しやすくなります。特定の食べ物や生活習慣に左右されやすく、自律神経の不調とも密接に関係しています。

胃食道逆流症(GERD)
慢性的なげっぷに悩む人へ、考えられる消化器の病気とは

GERDは胃酸や食物が食道に逆流し、胸焼けや喉の違和感を引き起こす病気ですが、中には腹痛を主訴とするケースもあります。とくに夜間、横になると胃酸が上がりやすくなり、胃の上部やみぞおち付近に鈍痛が生じることがあります。このような逆流による腹痛は、食後すぐに寝る、脂っこい食事や甘いものを摂ったあとに悪化しやすく、症状が出やすい時間帯が夜という共通点があります。長引くようであれば、逆流を抑える薬や生活改善が必要です。


内臓以外の原因にも注意

夜の腹痛の原因を考えるとき、胃や腸といった消化器系の病気が真っ先に思い浮かびますが、実は「内臓以外の要因」も無視できません。身体の他の部位や神経系、さらには心理的なストレスなどが、夜間に限って腹痛を引き起こすこともあるのです。

ストレス性腹痛

まず考慮すべきなのが、ストレス性腹痛です。精神的なストレスや緊張が続くと、自律神経が乱れ、腸のぜん動運動が過剰に起こったり逆に停止してしまったりすることで、腹痛を引き起こすケースがあります。日中は活動や人との関わりで気が紛れているため気づきにくいですが、夜に一人でリラックスした状態になると、かえって自律神経のバランスが崩れ、症状が出やすくなるのです。

筋肉のこわばりや冷え

また、腹部の筋肉のこわばりや冷えも腹痛の一因です。冷房の効いた部屋でお腹を冷やしたり、姿勢が悪い状態で長時間過ごしたりすると、腹筋に疲労や緊張がたまり、夜に痛みとなって現れることがあります。特に、座りっぱなしや運動不足の人は筋肉が硬直しやすく、血流も悪くなるため、痛みや違和感が生じやすくなります。

睡眠障害

さらに、睡眠障害との関連にも注目が必要です。入眠困難や途中覚醒などの睡眠の質の低下がある人は、夜間の身体の感覚が過敏になっていることがあります。これにより、普段なら気にしないような軽い腸の動きでも痛みとして感じてしまう「内臓知覚過敏」の状態に陥る可能性があるのです。


夜の腹痛と関連する生活習慣

夜遅い時間の食事

日常生活の中で知らず知らずのうちに行っている行動や習慣が、夜間の腹痛を引き起こす大きな原因となっていることがあります。特に、食事のタイミングや内容、姿勢、睡眠環境などは、腹部への負担に直結するため注意が必要です。まず見直すべきは、夜遅い時間の食事です。就寝前2〜3時間以内に食べ物を摂取すると、胃が休む暇もなく消化活動を行うことになり、胃酸の分泌が促進され、胃や腸に強い負担がかかります。特に脂っこい食事や糖質の多い食べ物は、消化に時間がかかるため、夜間の胃痛や腹部膨満感の原因になります。

加齢による腸の動きの変化

また、寝る直前の飲酒や過剰なカフェイン摂取も、消化器の働きを乱す要因になります。アルコールは一時的に腸の動きを活発にする一方で、腸内フローラを乱し、胃酸の逆流を引き起こす可能性もあります。さらに、就寝時の姿勢や寝具も腹痛の一因となり得ます。お腹を圧迫するような寝姿勢や、腰が沈み込むようなマットレスを使っていると、腹部の血流が滞り、腸の動きが鈍くなることがあります。睡眠中にお腹を冷やさないよう、腹巻きや湯たんぽを活用するのも効果的です。


子どもや高齢者に多い夜間腹痛の原因

子どもの腹痛

子どもや高齢者が夜に腹痛を訴える場合、それぞれ特有の原因が存在します。まず子どもでは、日中の興奮や緊張、ストレスが夜になってから体の症状として現れるケースが多くあります。特に学校や家庭での変化に敏感な子は、自覚がなくても胃腸の働きに影響を及ぼしてしまいます。また、成長過程にある子どもは、胃腸機能が未発達で敏感なため、少しの冷えや疲れでも夜間に腹痛が現れることがあります。就寝前のスマホやテレビの刺激も、自律神経を乱し、腸の動きを不安定にする原因になります。

大人の腹痛

一方、高齢者の場合は、加齢に伴って胃腸の働きが衰えることで、夜間に不快感を感じやすくなります。夜遅くの食事がうまく消化されず、逆流性食道炎のような症状につながるケースや、便秘の影響で夜間にお腹が張って痛むケースも多く見られます。また、慢性的な疾患(糖尿病、心疾患など)に伴う神経障害によって腹痛を感じることもあります。


市販薬で治らないときの対処法

市販の胃薬や整腸剤を使っても症状が改善しない場合、自己判断で様子を見続けるのは非常に危険です。とくに次のような症状も同時にある場合は、早期に医療機関を受診することをおすすめします。

・腹痛が1週間以上続く
・夜間に毎日同じ時間帯に痛みが出る
・胃もたれ、食欲不振、吐き気が併発している
・血便や黒い便が出る
・発熱や嘔吐を伴う

これらの症状は、胃潰瘍、胃がん、炎症性腸疾患などのサインである可能性もあります。医療機関では、内視鏡検査(胃カメラ)や腹部エコー、血液検査などにより、痛みの原因を正確に診断できます。特に夜間に限定して現れる痛みは「体の異常のサイン」である可能性が高いため、軽視せずに早めの対応が重要です。



対処法と予防法

食生活の見直し

夜の腹痛に悩まされないためには、毎日の生活習慣を見直すことが根本的な予防策になります。まず食事面では、夕食は就寝の2〜3時間前に済ませ、消化の良いものを選ぶように心がけましょう。脂質の多いものや辛い料理は避け、スープや温野菜、豆腐、魚など胃腸にやさしい食材を選びましょう。

ストレスマネジメント

ストレスマネジメントも重要です。日中の緊張をそのまま夜まで引きずっていると、自律神経が乱れ、腸の不調につながります。入浴、軽いストレッチ、アロマ、深呼吸などを取り入れ、リラックスした状態で就寝できるように意識しましょう。さらに、適度な運動や睡眠の質改善も、夜の腹痛予防には効果的です。毎日のウォーキングや軽い体操で腸の血流を促し、腹部の冷えを防ぐことで、腸内の動きが整いやすくなります。

夜だけ腹痛が起こるという症状は、単なる胃の不調ではなく、身体が発している重大なサインかもしれません。消化器系の病気はもちろん、ストレスや生活習慣の乱れ、寝具や姿勢といった日常の小さなことが、大きな影響を及ぼしている可能性もあります。「夜だけだから大丈夫」と放置せず、自分の体の声にしっかり耳を傾け、早めに対処することで、安心して毎日を過ごすことができます。必要があれば、専門医の力を借りることも恐れず、健康的な生活リズムを取り戻すきっかけにしましょう。


よくある質問(FAQ)

夜だけ腹痛が起きるのはなぜですか?

副交感神経が優位になって腸が活発になるため、日中は感じにくい腸の不調が夜に顕在化することがあります。

市販薬で治らないのは重病の可能性ですか?

胃潰瘍や腫瘍などの可能性も否定できないため、長引く場合は必ず医師に相談を。

食事以外で注意するポイントは?

寝具の硬さや腹部の冷えも影響するため、寝姿勢や部屋の温度調整にも配慮を。

子どもが毎晩お腹が痛いと訴えます。大丈夫?

成長痛やストレスのサインかもしれません。生活環境を整えた上で、改善がなければ小児科へ。

食後にすぐ寝ると痛くなります。関係ある?

はい。食後すぐの横になる行動は胃酸の逆流や消化不良を招きやすく、腹痛の原因となります。

胃カメラが怖いです。避ける方法は?

経鼻内視鏡や鎮静剤を使う検査もあります。検査前に医師としっかり相談しましょう。