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旅行中の便秘を防ぐための習慣と食べ物

便に関するお悩み
旅行中の便秘を防ぐための習慣と食べ物
友利 賢太

院長 友利 賢太

資格

  • 医学博士(東京慈恵会医科大学)
  • 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
  • 日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
  • 日本消化器内視鏡学会
    上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本消化器内視鏡学会
    大腸内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本外科学会 日本外科学会専門医
  • 日本消化管学会 消化管学会専門医
  • 日本ヘリコバクター学会 H. pylori 感染症認定医
  • 4段階注射療法受講医
  • 東京都難

旅行中に便秘になりやすい理由とは?

旅行に行くと、「楽しいはずなのにお腹が張って苦しい」「数日間便が出ない」といった便秘の悩みを抱える人が多くいます。日常では問題なく排便できていても、旅行に出ると突然リズムが崩れるという経験を持つ人は非常に多いです。これは、旅行という非日常の環境が、私たちの身体や腸に大きな影響を及ぼしているためです。

 

旅行中の便秘の原因

環境の変化とストレス

最も大きな原因は「環境の変化とストレス」です。慣れない場所に泊まり、普段と違うベッドで寝て、知らない土地で過ごすということ自体が、軽度のストレスになります。とくに神経質な人はトイレの場所や衛生状態が気になり、排便を我慢してしまう傾向があります。このような些細な環境の違いが、腸の働きを鈍らせてしまうのです。

水分不足

また、「水分不足」は旅行中の便秘を助長する大きな要因です。移動中の飛行機や長距離バスでは、水分補給が不十分になりがちです。トイレのタイミングが難しい場面では、水分を意識的に控えてしまう人もいますが、これが便を硬くし、排出しにくくする原因になります。便の水分量が少ないと、腸内での移動が鈍くなり、滞留してしまうのです。

食生活の乱れ

加えて、旅先では食生活も乱れがちです。外食が続くと食物繊維が不足し、油っぽい食事や糖分の多いものが中心になります。さらに、睡眠不足や生活リズムの乱れも加わることで、自律神経のバランスが崩れ、腸の動きにブレーキがかかってしまいます。


旅行中の便秘が引き起こす問題

旅行中に便秘になると、単に「排便できない」というだけでは終わらず、体調や精神面、さらには旅行全体の満足度にも大きな悪影響を及ぼします。便秘は体の中で起きている“詰まり”のようなもので、放置すると様々なトラブルの引き金になることがあります。

腹部の膨満感と不快感

まず最もよく見られる問題が腹部の膨満感と不快感です。排便されない便が腸内に留まり、ガスが発生しやすくなります。これにより下腹部が張って苦しくなり、衣類がきつく感じたり、立っていても座っていても違和感がつきまとうようになります。この不快感は、歩くことや観光そのものへの集中力を妨げ、旅行を純粋に楽しめない状態を招きます。

全身のだるさや疲労感

次に挙げられるのが、全身のだるさや疲労感です。腸内に老廃物が蓄積されると、有害ガスや毒素が血流に乗って全身を巡り、代謝が低下して「なんとなく体が重い」「疲れやすい」といった感覚が生まれます。これにより、せっかくの旅行中でもエネルギーが湧かず、アクティブに行動する意欲が失われてしまうことがあります。

肌トラブル

さらに、肌トラブルも便秘によって引き起こされる代表的な問題です。腸内環境の乱れは皮膚にも影響を及ぼし、吹き出物や肌のくすみ、乾燥といった変化が起こりやすくなります。特に女性はメイクのノリが悪くなることに敏感で、旅先での写真撮影にも影響するため、精神的なストレスも増してしまうかもしれません。

食欲不振や消化不良

加えて、便秘によって食欲不振や消化不良が起こることもあります。腸内に便が溜まっていると、次に入ってくる食べ物のスペースが圧迫され、胃腸全体の動きが鈍くなります。その結果、食欲が落ちてしまい、旅行先でのご当地グルメや食の楽しみを十分に堪能できなくなるという、非常にもったいない状態になるのです。

ストレス

また、旅行中は他人と行動を共にすることが多いため、「便秘で苦しいけど言い出せない」「トイレに行くタイミングが掴めない」など、精神的な負担も大きくなります。このようなストレスは、自律神経をさらに乱れさせ、便秘を悪化させるという悪循環を引き起こす原因になります。

頭痛や吐き気、強い腹痛

最悪の場合、便秘が3日以上続くと、頭痛や吐き気、強い腹痛を伴うケースもあり、病院の受診や薬の使用を検討せざるを得なくなることもあります。海外旅行中などは医療機関へのアクセスが困難な場合もあるため、便秘は「軽視できない体調リスク」のひとつとして事前に備えることが大切です。


旅行前からできる便秘対策

トイレへ行く習慣

旅行中の便秘を防ぐためには、旅に出る前から「整える」意識が重要です。出発当日だけでなく、数日前から腸内環境を安定させておくことで、旅行先でも排便リズムを崩しにくくなります。まず、日頃から朝にトイレへ行く習慣をつけておくことが大切です。毎朝同じ時間に起床し、コップ一杯の水を飲んで朝食を食べることで、胃腸に「今日も動き出そう」という信号が送られ、自然と排便を促すサイクルが作られます。この排便リズムを旅行中も維持できれば、環境が変わっても便秘になりにくくなります。

食生活を整える

また、旅行前には発酵食品や食物繊維の摂取を意識的に増やすと効果的です。特にヨーグルトや味噌汁、納豆、ぬか漬けなどの日本の伝統的な発酵食品は、腸内の善玉菌を育てる働きがあり、出発前に腸内バランスを整えるために最適です。整腸剤や乳酸菌サプリメントを飲み始めるのも、旅行の1週間ほど前からがおすすめです。体に合ったサプリを使うことで、旅先でも腸内の状態を安定させやすくなります。なお、旅行中に便秘が心配な方は、便秘薬ではなく整腸剤を選ぶことが望ましいです。便秘薬は腸に強く働きかけるため、出先での急な腹痛や下痢を引き起こす恐れもあるため、使用には注意が必要です。


旅行中に取り入れたい生活習慣

旅行先では、日常とは違った生活リズムになりがちですが、それでも腸にとって“安心できる習慣”をできる限り保つことが便秘予防のカギとなります。

起床時間

まずは起床時間と朝食のタイミングを一定にすること。どんなに夜遅く寝たとしても、朝はしっかり起きて光を浴び、水分を摂ることが大切です。朝食を抜いてしまうと、腸の動きが鈍り、排便のチャンスを逃してしまうことがあります。特に旅行中は移動や観光の予定に追われて、朝食が疎かになりやすいですが、軽くでも食べることが腸を動かすスイッチになります。

トイレに行くタイミング

次に、トイレに行くタイミングを逃さないことも重要です。「ちょっと我慢しておこう」と排便欲求を無視すると、腸は“今は出さなくてもいい”と誤解してしまい、動きが鈍ります。なるべく普段通りの排便タイミングを維持するようにし、トイレが不便な場所では出先でも落ち着ける場所を事前にリサーチしておくと安心です。

軽い運動

さらに、移動中もできるだけ身体を動かすことが大切です。飛行機や新幹線など長時間同じ姿勢でいると、腸の動きも止まりがちになります。立ち上がってストレッチをする、腰回しをする、軽くウォーキングするなどして血流を促進させることで、腸の活動もサポートされます。

入浴の習慣

また、入浴の習慣を保つこともおすすめです。湯船に浸かることで自律神経が整い、副交感神経が優位になって腸が活発に動き出します。ホテルや旅館ではできるだけ湯船を利用し、リラックスした時間を持つことが快適な排便につながります。


便秘を防ぐおすすめの食べ物

旅行中の便秘対策において、「何を食べるか」は非常に重要です。便通をスムーズにするためには、腸の動きを助け、便を柔らかく保つ栄養素を意識して摂取することが大切です。特に注目したいのが、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、発酵食品、そしてオリゴ糖です。

食物繊維

まず、水溶性食物繊維は、腸内で水分を吸収してゲル状になり、便を柔らかくしてスムーズに排出されやすい状態にしてくれます。代表的な食品としては、わかめ、昆布、里芋、オクラ、納豆、バナナなどがあります。これらは胃に優しく、移動で疲れた消化器にもやさしい食材です。
一方、不溶性食物繊維は、便のかさを増やし、腸を刺激してぜん動運動を促進します。ごぼう、豆類、きのこ類、玄米、さつまいもなどがその代表で、バランスよく水溶性と不溶性の両方を摂ることで、理想的な排便環境を整えることができます。

発酵食品

発酵食品も便秘対策には欠かせません。乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルト、味噌、ぬか漬けなどは、腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌の繁殖を抑える働きがあります。特に、旅先での食事が脂っこくなりがちなときには、腸内環境を整える効果がより期待できます。

オリゴ糖

また、オリゴ糖を含む食材—バナナ、玉ねぎ、にんにく、大豆など—は、腸内の善玉菌のエサとなり、腸内フローラを改善してくれる重要な成分です。手軽に摂れるオリゴ糖入りの飲料やサプリメントも、旅行中の便秘予防に便利です。


旅行先での外食の工夫

旅行中はどうしても外食が中心になりますが、選び方次第で便秘を予防することが可能です。基本的なポイントは、「野菜を意識的に多く摂ること」「炭水化物や脂っこいものに偏らないこと」「腸内環境を乱しにくい食材を選ぶこと」です。

和食メニュー

たとえば、和食の定食メニューは理想的な選択肢です。味噌汁、漬物、煮物、焼き魚などがバランスよく含まれており、食物繊維も発酵食品も取りやすい構成になっています。一方で、ハンバーガー、フライドポテト、クリームパスタといった高脂肪・高糖質の食事は、腸内に悪玉菌を増やしやすく、便秘の原因になります。野菜が少ないと感じたときは、サイドメニューでサラダを追加したり、コンビニやスーパーでカット野菜や野菜ジュースを取り入れるなどの工夫が有効です。また、フルーツの摂取もおすすめで、特にキウイ、りんご、バナナなどは便通改善効果が高い果物として知られています。

食べるタイミング

さらに、食べるタイミングや順番も重要です。野菜や汁物を先に食べることで胃腸の働きが促され、満腹感が得られやすくなり、消化にも良い影響を与えます。ゆっくりとよく噛んで食べることで、腸への負担を軽減し、旅先でも快便を維持しやすくなります。


飲み物の選び方と水分補給のコツ

旅行中の水分補給は、便秘対策の中でも特に重要なポイントです。十分な水分が腸に供給されていないと、便が硬くなり排出しづらくなってしまいます。しかし、ただ水分を摂るだけでなく、「どんな飲み物を、どのタイミングで、どれくらい摂るか」も意識する必要があります。

常温または温かい飲み物

まず、常温または温かい飲み物を選ぶことが基本です。冷たい飲み物は一時的に爽快感を与えますが、内臓を冷やしてしまい、腸の動きを鈍らせてしまうことがあります。白湯や温かいハーブティー、ノンカフェインのお茶(ルイボスティー、麦茶など)は腸を優しく温め、ぜん動運動を促してくれます。

カフェインを含む飲み物

カフェインを含む飲み物—コーヒーや緑茶など—は利尿作用があるため、過剰に摂ると体内の水分が不足してしまう可能性があります。また、アルコールは脱水を促進し、腸の働きも弱めてしまうため、飲みすぎには要注意です。もしアルコールを飲む機会がある場合は、必ず同時に水分を補うようにしましょう。

意識的な水分補給

飛行機や長距離移動の際には特に脱水が進みやすくなるため、意識的な水分補給が不可欠です。こまめに飲むこと、喉が乾く前に飲むことが基本です。水や白湯を小さなボトルに入れて持ち歩き、1日1.5~2リットルを目安に水分補給を続けることで、便の柔らかさを保ち、スムーズな排便につながります。


よくある質問(FAQ)

旅行前に便を出しておくにはどうすればいい?

出発前日から十分な水分を摂取し、食物繊維と発酵食品を多く含む食事を心がけましょう。朝食後の排便習慣がない方は、起床後に白湯を1杯飲み、軽いストレッチを行うと腸の動きが活性化します。また、朝食をしっかり食べることで胃・結腸反射が働き、自然な便意を促進します。

現地の料理が合わずに便秘になった場合は?

油分や香辛料が多い料理は腸に負担をかけやすく、便秘の原因になることもあります。その際は、食事内容を見直し、消化に優しいもの(おかゆ、スープ、バナナ、温野菜など)を選びましょう。また、温かい飲み物やヨーグルト、乳酸菌飲料を取り入れることで腸内環境の回復を助けられます。

整腸剤や便秘薬は持っていくべき?

はい、持っていくことをおすすめします。ただし、便秘薬は強く作用するものもあるため、初めて使うタイプを旅行中に試すのは避けたほうが無難です。普段から使っている整腸剤や軽めの便秘対策用サプリを、あらかじめ準備しておきましょう。漢方薬(例:大黄甘草湯など)を選ぶのもひとつの手です。

便秘でお腹が張って痛いとき、我慢しても大丈夫?

痛みが軽い場合は、水分を摂りながら軽く歩いたり、腹部を温めたりすることで自然と改善することがあります。しかし、強い腹痛や吐き気、便が全く出ない状態が2〜3日以上続く場合は、腸閉塞や腸のねじれなど重篤な症状のリスクもあるため、医療機関を受診すべきです。

子どもが旅行中に便秘になったときの対応は?

子どもは環境の変化に敏感で、トイレを我慢しやすいため、こまめに声かけをしてリラックスさせてあげましょう。普段と同じ食材(バナナ、ヨーグルトなど)を持参したり、絵本などで落ち着ける環境を作ってあげるのも有効です。必要であれば、小児用整腸剤を使用するのも選択肢です。

海外旅行ではどう便秘対策すればいい?

水質の違いや食文化の変化により、腸内バランスが乱れやすくなります。生野菜や水道水を避け、加熱された安全な食品を選ぶことが前提です。そのうえで、乳酸菌サプリや食物繊維入り飲料を常備しておくと安心です。水分補給も欠かさず、可能であれば同じ時間にトイレに行くようにして、排便リズムを保ちましょう。