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胃がムカムカして吐き気も…妊娠初期症状との見分け方

胃に関するお悩みについて
胃がムカムカして吐き気も…妊娠初期症状との見分け方
友利 賢太

院長 友利 賢太

資格

  • 医学博士(東京慈恵会医科大学)
  • 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
  • 日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
  • 日本消化器内視鏡学会
    上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本消化器内視鏡学会
    大腸内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本外科学会 日本外科学会専門医
  • 日本消化管学会 消化管学会専門医
  • 日本ヘリコバクター学会 H. pylori 感染症認定医
  • 4段階注射療法受講医
  • 東京都難

胃のムカつきと吐き気はなぜ起こる?基本メカニズム

胃の生理的機能と吐き気の関係

胃のムカムカや吐き気は、消化器官の異常や刺激により起こる自然な反応です。胃は食べ物を消化するために胃液を分泌しますが、食べ過ぎや不適切な食生活、暴飲暴食などによって胃酸が過剰になると、粘膜が刺激されて吐き気が誘発されることがあります。また、胃の収縮や運動機能の乱れも関係しています。食べ物がスムーズに腸へ送られず胃内に停滞すると、不快感やムカムカ感を引き起こすのです。胃は自律神経に大きく左右される臓器のため、わずかなストレスや不安でも胃の働きが低下し、吐き気が出ることがあります。

ホルモン・自律神経・ストレスの影響

妊娠初期には、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)やエストロゲン、プロゲステロンなどのホルモンが急激に増加します。これが脳の嘔吐中枢を刺激し、吐き気や胃のムカつきといった症状を引き起こすとされています。また、これらのホルモン変化は自律神経のバランスも乱しやすく、体温調整、消化機能、気分の変化にもつながります。ストレスや不安も加わると、症状がさらに強く感じられるようになるため、妊娠による吐き気と通常の胃の不調は、原因が複合的である点が大きな違いです。


妊娠初期の典型的な症状一覧

吐き気・食欲不振・匂いに敏感になる
慢性的なげっぷに悩む人へ、考えられる消化器の病気とは

妊娠初期にもっとも多く見られる症状が吐き気と食欲不振です。とくに朝起きた直後や空腹時に強く感じる「つわり」は、約70〜80%の妊婦が経験すると言われています。また、普段は平気だった匂いに敏感になり、香水・タバコ・調理の匂いなどで吐き気をもよおすこともあります。このような感覚過敏は、妊娠によるホルモンの変化によって嗅覚が鋭くなることが原因であり、「いつもと違う」「突然、嫌悪感がある」などの変化があれば、妊娠初期の可能性を疑ってみましょう。

眠気・微熱・下腹部の違和感なども

妊娠初期には、黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で強い眠気が生じることがあります。夜しっかり寝ていても日中に眠くなる、集中力が低下するといった症状もこのホルモンの作用です。また、基礎体温が高温期を維持することで微熱のようなだるさが続くこともあります。風邪のように感じるかもしれませんが、喉の痛みや咳が伴わない場合は妊娠の可能性を考慮してよいでしょう。さらに、子宮が徐々に大きくなることにより、軽い下腹部の張りや違和感を感じる女性もいます。これらが複数組み合わさるときは、妊娠を疑う大きなヒントとなります。


消化不良や風邪など他の原因との違い

胃腸炎・逆流性食道炎・食あたりとの違い

胃のムカムカや吐き気が妊娠によるものではなく、消化器疾患が原因の場合もあります。たとえば胃腸炎では、悪心に加えて下痢・発熱・腹痛を伴うことが多く、食あたりでは症状の進行が急激です。逆流性食道炎の場合は、寝起きや食後に胸やけを感じる、酸っぱいゲップが出るといった症状が加わります。こうしたパターンは、妊娠初期のつわりとは症状の出方や経過が異なるため、総合的に見て判断することが大切です。

風邪やPMS(月経前症候群)との見分けポイント

PMSは月経前にホルモン変化によって起こる一時的な不調で、頭痛・胸の張り・便秘・イライラ・軽い吐き気などが出ることがあります。これも妊娠初期症状と非常によく似ていますが、生理が始まると治まるのがPMSの特徴です。また、風邪の場合は咳・喉の痛み・鼻水などの上気道症状を伴うことが多く、妊娠による微熱との区別が可能です。食欲や味覚の変化も風邪とはやや異なる点に注目してください。


妊娠初期と区別するための5つのチェックポイント

生理予定日の遅れ

妊娠を疑う際、もっとも基本的で重要な指標になるのが生理の周期です。もし予定されていた生理が遅れている場合、妊娠している可能性があります。特に普段から周期が安定している方で、生理が予定より1週間以上遅れているなら、妊娠の兆候として真剣に考えるべきです。もちろん、ストレスや体調の変化などでも生理が遅れることはありますが、胃のムカつきや吐き気が同時に現れているのであれば、その関連性を疑ってみる必要があるでしょう。

着床出血の兆候

着床出血とは、受精卵が子宮内膜に定着する際に軽い出血が見られる現象です。これは妊娠のごく初期に起こることがあり、生理と勘違いされやすい傾向があります。通常の生理に比べて出血量は少なく、色も薄いピンクや茶色っぽい場合が多く、出血期間も非常に短いのが特徴です。もし出血があるにもかかわらず、生理としては量が少なく違和感があると感じた場合は、着床出血である可能性を念頭に置き、妊娠の可能性を意識しておくことが大切です。

基礎体温の推移

基礎体温を毎日記録している人であれば、そのグラフの動きから妊娠の兆候を読み取ることができます。通常、排卵後は体温が高温期に入り、生理が始まると低温期に戻ります。しかし、妊娠が成立している場合は、この高温期が14日以上持続し、基礎体温が下がらないまま続くのが特徴です。高温が安定して維持されているときには、妊娠検査薬の使用を検討するタイミングといえます。

他の身体的変化の確認

妊娠が成立すると、身体にはさまざまな変化が現れます。代表的なものとしては、胸の張りや乳首の違和感、頻繁な尿意、便秘、下腹部の軽い痛みなどがあげられます。これらはプロゲステロンという女性ホルモンの影響によって起こる自然な変化であり、胃の不調だけでなく体全体の違和感として表れる場合があります。これまでにない体の重さや変化を感じたら、それも妊娠のサインかもしれません。

妊娠検査薬の適切な使用時期

妊娠の可能性をはっきりさせたい場合には、市販の妊娠検査薬を使用する方法があります。ただし、検査薬を使う時期には注意が必要です。生理予定日から1週間以上経過した時点で使うと、正確な結果が出やすくなります。早期妊娠検査薬を使えば生理予定日当日から使用できますが、陰性だったとしても日を改めて再検査するのが賢明です。検査の際には、尿中のhCGホルモン濃度が最も高い朝一番の尿を使うことが推奨されています。


医師に相談するべき症状とタイミング

医療機関を受診するタイミング

妊娠初期症状と自己判断していたとしても、場合によっては思わぬ病気や緊急性の高いトラブルが隠れていることもあるため、注意が必要です。特に、激しい吐き気で食事や水分が取れない場合や、明らかな腹痛や下腹部の張り、高熱が出ているときには、すぐに医療機関を受診することが推奨されます。さらに、吐き気が数日間続き、何も口にできない、または全身の倦怠感が強まっているなど、日常生活に支障をきたすような症状がある場合も見過ごしてはいけません。妊娠初期の症状に似ていても、子宮外妊娠や重度の胃腸炎、婦人科系の疾患である可能性も否定できないため、放置せず早めの判断が重要です。


市販薬を使う前に気をつけたいこと

妊娠の可能性があるにもかかわらず、自己判断で市販薬を服用することは避けなければなりません。特に胃薬や解熱鎮痛薬、風邪薬などの一部には、妊娠中の使用が推奨されない成分が含まれている場合があります。
たとえば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は妊娠初期には避けるべき薬とされており、同様に漢方薬の中にも子宮収縮を促してしまう恐れのある成分が含まれていることがあります。市販薬を服用する前には、必ず「妊娠中でも服用可能かどうか」の表記を確認し、可能であれば医師や薬剤師に相談するのが安心です。特に妊娠を希望している場合や可能性を感じている時期には、日常的に口にする薬やサプリメントにも注意を払うことが必要です。


妊娠でなかった場合に考えられる主な疾患

妊娠ではなかったと判明した場合でも、胃のムカムカや吐き気が続いているときは、他の疾患が背景にある可能性を考慮する必要があります。これらの症状は、さまざまな内臓や神経の不調から生じることがあるため、自己判断に頼らず、適切な診断を受けることが重要です。

胃炎や胃潰瘍

胃炎や胃潰瘍は代表的な例で、胃酸の過剰分泌やストレス、不規則な食生活などによって胃の粘膜が炎症を起こし、持続的な不快感を引き起こします。初期の段階では妊娠初期症状に似た吐き気や胃の重さとして現れることが多く、見分けがつきにくいことがあります。また、逆流性食道炎でも似たような症状が見られます。特に、就寝時や食後に胃酸が食道へ逆流し、胸やけや喉の違和感、咳、胃のムカムカが続くケースでは、妊娠ではなく胃食道逆流症の可能性を視野に入れる必要があります。

自律神経の乱れ

精神的なストレスによる自律神経の乱れも、吐き気や胃の不調を引き起こす大きな要因です。日々のストレスや不安が蓄積すると、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、消化器官の働きが悪くなってしまいます。これは「機能性ディスペプシア」や「心因性胃腸炎」と診断されることもあり、メンタルケアが非常に重要になります。

胆のうや膵臓異常

さらに、胃以外の臓器、たとえば胆のうや膵臓の異常によっても、似たような吐き気が出現することがあります。胆のう炎や胆石症では、脂っこいものを食べた後にムカムカ感が強まることがあり、膵炎の場合は背中まで放散するような痛みを伴う場合もあります。これらの疾患は放置すると重症化する恐れがあるため、違和感が続くようであれば早めの診察を受けましょう。


妊活中・妊娠希望の方に伝えたい体調管理のポイント

妊活中の女性や妊娠を希望している方にとって、体調管理は妊娠のしやすさにも直結する大切なテーマです。胃の不調や吐き気などを感じたとき、それが単なる体調不良なのか、妊娠の兆候なのかを見極めるためにも、普段から体調の変化を細かく観察する習慣が重要になります。

食生活

まず食生活についてですが、栄養バランスの取れた食事を心がけることで、ホルモンバランスの安定や免疫力の維持が期待できます。過剰なカフェインやアルコール、脂質の多い食事は避け、ビタミンB群や葉酸、鉄分を意識的に摂取すると良いでしょう。妊活中はサプリメントの摂取も検討されますが、信頼できる製品を選び、必要に応じて医師に相談することが望ましいです。

睡眠

睡眠もホルモンの調整に欠かせない要素です。十分な睡眠時間を確保し、就寝時間と起床時間を一定に保つことで、自律神経が整い、胃腸の働きも良くなります。また、深夜までスマホやパソコンの光を浴びているとメラトニンの分泌が抑制され、睡眠の質が下がってしまいます。寝る1時間前は画面を見ないなど、入眠環境の工夫も大切です。

ストレス管理

さらに、ストレスの管理も重要です。妊活中はどうしても「結果」にとらわれて心身に負担がかかりやすくなります。必要以上に情報に振り回されることなく、自分のペースを大切にすること。好きな趣味に没頭する時間や、リラックスできる音楽を聴く時間など、心が休まる時間を持つことが体にも良い影響を与えます。

妊娠の可能性がある時期には、服用する薬にも注意が必要です。風邪薬や胃薬のなかには妊娠初期に影響を与える可能性のある成分が含まれていることがあるため、必ず医師や薬剤師と相談しながら使用することが推奨されます。


よくある質問(FAQ)

妊娠かもしれないと思ったときに、多くの方が感じる疑問についてお答えします。

胃がムカムカして気持ち悪いとき、それだけで妊娠を疑ってよいのか?

吐き気だけでは判断できませんが、同時に生理の遅れや体温の上昇、胸の張りなど複数の兆候が見られる場合は、妊娠の可能性を考えてよいでしょう。単独の症状ではなく、他の変化と合わせて観察することがポイントです。

妊娠しているかもしれないけれど市販薬を飲んでも大丈夫か?

自己判断で薬を飲むのは避けた方がよいでしょう。とくに解熱鎮痛剤や胃薬には妊娠初期に影響を与える成分が含まれていることがあるため、使用する前に必ず医師や薬剤師に相談することが大切です。

妊娠初期の症状と風邪の症状はどう見分けるのか?

両者には共通する症状が多いため、完全に見分けるのは難しいですが、風邪には咳や喉の痛みといった呼吸器系の症状が伴うことが多く、妊娠初期ではそういった症状が出ないことが一般的です。また、妊娠では微熱が続いても悪化しにくく、喉の腫れや鼻水などが目立たない傾向があります。