便秘の原因と解消法

便秘について

便秘は医学的には「体外に排出すべき便を十分に且つ快適に排出できない状態」と定義されていますが、簡潔に言うと「3~4日以上排便できずにお腹に不快感が出る状態」になります。
便秘自体は危険な症状というわけではありませんが、慢性的に便秘症状に悩まれている方は少なくないでしょう。
男女比では、女性は男性の約2倍発症しやすいとされており、特に若い女性に多く、男性も高齢になるにつれて増加傾向にあります。
疾患の中でも便秘は身近なものとしてありますが、時に重要な疾患が原因で生じているケースもあり、慢性的な下痢症状が出ている場合は原因の特定が重要です。

便秘

 

便秘の原因

便秘は若い女性によく見られる症状ですが、原因については女性ホルモンが乱れる、ダイエット、妊娠・出産などが関係しており、他にも排便をこまめにしなかったり、排便のタイミングを逃して便意を我慢することで生じやすくなります。
高齢者に生じる原因としては、腸の蠕動運動の低下や身体の活動量の低下、腹圧の低下などが関係しているとされています。
また、疾患が原因になっていることもあり、特に注意すべきは大腸がんで、進行すると大腸管に狭窄が起こり、便が出づらくなって便秘症状を引き起こします。さらに悪化すると腸閉塞などの重篤な疾患を引き起こす可能性があります。
慢性的に便秘症状が続く場合や激しい腹痛を伴う便秘症状はお早めにご相談ください。

便秘の解消法

便秘解消便秘の治療法や硬くなった便を出す方法として、まずは運動療法や食事療法などで生活習慣の改善を行います。
運動療法では、できる限り毎日30~40分のウォーキングを行うことで大腸の蠕動運動が促進され、排便しやすくなります。
また、食事療法ではバランスの良い食事を1日3回、決まった時間に摂るようにしてください。特に朝食はしっかり摂るようにしましょう。データによると大学生で便秘症状を訴える方の30~50%の方は朝食をしっかり摂っていないことがわかっており、朝食を摂っている大学生と大きな差が生まれているとの報告があります。
食事内容も重要で、食物繊維が豊富に含まれる食べ物を中心に摂るようにしましょう。食物繊維は大きく2つに分かれており、便中に溶けて便を柔らかくする効果がある「水溶性食物繊維」、腸の蠕動運動を促す「不溶性食物繊維」があります。水溶性食物繊維が多く含まれる食べ物としては海藻やこんにゃく、果物などが挙げられ、不溶性食物繊維は根菜類、野菜類、豆類、きのこ類などが挙げられます。
また、水分補給は便を柔らかくする効果があるので、こまめに水分補給をしましょう。

便秘の検査

便秘の原因は様々ですので、まずは他に症状がないか確認し、既往歴や服用中のお薬、摂取した食べ物などをおうかがいします。
そのうえで、必要に応じて内視鏡検査(大腸カメラ検査)などを行います。

便秘の治療

便秘の治療ではまずは運動療法と食事療法で生活習慣の改善を行いますが、それでも改善しない場合は便秘薬を使った薬物療法を並行して行います。
便秘薬は様々な種類がありますが、便の性状を見極めて処方しております。
便の性状には「ブリストルスケール」という指標があり、これは臨床現場で利用されることがあります。

便の性状(ブリストルスケール)

ブリストルスケールは7つのタイプに分かれており、便秘症状の方で多いのは1~3で、4または5のタイプを目標に治療を進めていきます。
便秘薬は大きく分けて2種類あり、腸の蠕動運動を活発にする刺激性下剤、腸の水分を集めて便を柔らかくする非刺激性下剤になります。治療ではまず非刺激性下剤を使用し、改善が見られない場合は刺激性下剤を使用します。

市販のお薬も刺激性下剤と非刺激性下剤があるので、購入される際はどちらのタイプなのかを見極めて購入するようにしましょう。刺激性の下剤(大黄などの一部漢方も含む)は、習慣性があり長期内服で耐性が生じ、難治性の便秘症を引き起こすことがあるので、連用は避けましょう。長期内服している方は、大腸カメラ検査で、大腸粘膜が豹柄のように黒
褐色に色素沈着をおこし(偽メラノーシス)、特徴的な所見を示します。この状態は腸が弛緩し、腸管の運動が弱くなり便秘を悪化させるとされておりますが、刺激性下剤の中止によって腸管の色素沈着はなくなり改善します。便秘の際は、まずは緩下剤などの非刺激性下剤の内服とし、改善しない場合は消化器専門の医師に相談するようにしてください。
以下では市販の便秘薬に含まれる成分をまとめております。

ブレーデンスケール

市販のお薬も刺激性下剤と非刺激性下剤があるので、購入される際はどちらのタイプなのかを見極めて購入するようにしましょう。
以下では市販の便秘薬に含まれる成分をまとめております。

漢方薬刺激性下剤センナ、ピコスルファートナトリウム、ビサコジル、センノシドなど腸粘膜や神経を刺激することで、腸の蠕動運動を促します。

種類 主な成分 効果
蠕動運動を促す刺激性下剤 刺激性下剤 センナ、ピコスルファートナトリウム、ビサコジル、センノシドなど 腸粘膜や神経を刺激することで、腸の蠕動運動を促します。
漢方薬 甘草、大黄など 腸粘膜や神経を刺激することで、腸の蠕動運動を促します。
便を柔らかくする非刺激性下剤 膨潤性下剤 オバタ種子(食物繊維)・プランダコ 腸管内の水分を吸収して便を柔らかくすることで、腸の蠕動運動も促します。
塩類下剤 水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムなど 腸管内の水分を吸収して便を柔らかくします。
浸潤性下剤 ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)など 腸管内の水分を吸収して便を柔らかくすることで、腸の蠕動運動も促します。

専門医からのコメント

近年はストレス社会、運動量低下や高齢化社会に伴い便秘症のかたは多く来院されます。慢性的な便秘症は生活の質を著しく低下させますし、基礎疾患に対して普段内服している薬剤、糖尿病や甲状腺疾患、大腸がんなどによって引き起こされることもあり注意が必要です。
便秘とは“本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態”のこととされています(慢性便秘症ガイドライン2017)。

これらを判断する基準としては、排便時のいきみ、便性状、残便感や排便回数があげられますが、連日排便があるとしても強いいきみや残便感、硬いコロコロ便しか出ていないようでしたら便秘症であると判断されます。逆に3日に一度程度しか出なくても上記症状がなく、便性状も普通や柔らかい便のみであれば便秘症とはいえないでしょう。

これまでは便秘といえば市販薬やサプリメントに頼る方も多く、上記の刺激性下剤を含む薬剤の連用により便秘症状の悪化が見られることも多くあります。近年では、便秘症に対する薬剤も増えてきており治療の選択肢は広がっていますので、慢性的に便秘の続く場合は、原因検索も含めて一度専門医に相談することをおすすめいたします。

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